仇敵

  • 2018.06.25 Monday
  • 17:09

書名:仇敵
著者:池井戸 潤
発行所:講談社200
発行年月日:2018/3/22
ページ:373頁
定価:590円+税

 

大手都市銀行の次長職から或る事件の責任をとって大手銀行を退職。地方銀行の庶務行員となった恋窪商太郎。駐車場の整理とフロア案内の傍ら、融資に悩む後輩社員へアドバイスする…そんな日々に、今までの銀行員生活からは考えられない「人間らしさ」を取り戻した恋窪だったが―。

 

そんな恋窪商太郎の前に以前の事件の影が忍び寄ってくる。「正義」を求めたばかりに組織を弾き出された男が、大銀行の闇に再び立ち向かう!、男の闘いを描く銀行ミステリー!短編の小説を読んでいくと全編が見えてくる構成になっている。2003年前後の武蔵小杉周辺、新丸子、自由が丘、東横線沿線を舞台に描かれている。武蔵小杉はずっと勤めていた土地勘のある場所、懐かしい感じで読んだ。

 

勿論2003年頃だとまた高層ビル、タワーマンション、横須賀線の武蔵小杉駅もなかった。時代南武線と東横線、NECの玉川事業場は1階建ての工場工場していたところだったのが、突然、26階建ての高層ビルが建った。川崎市の条例が変更されて高層ビルが建てられるようになった。でも今のタワーマンションの乱立、ビル風の脅威、横須賀線の武蔵小杉駅に大混雑とこの小説の舞台だった時代とは大きく様変わりしている。

 

本書目次より
−−−−−−
■庶務行員
■貸さぬ親切
■仇敵
■漏洩
■密計
■逆転
■裏金
■キャッシュ・スパイラル
●解説/霜月蒼

 

陰謀の日本中世史

  • 2018.06.24 Sunday
  • 17:10

書名:陰謀の日本中世史
著者:呉座 勇一
発行所:KADOKAWA
発行年月日:2018/3/10
ページ:343頁
定価:880+税

 

ベストセラー『応仁の乱』の著者呉座勇一の構想三年の書き下ろし!二匹目のドジョウを狙った本か?史上有名な事件になると直ぐに陰謀説が出てくる。これはまともな学者からは出てこない。歴史学会では完全に無視されている。そんな陰謀説に真面目に取り組んで、陰謀なんてないということを証明しようとしている本です。

 

結構堅い本田から読んでいてなかなか中に入り込めない。読みづらい本です。本能寺の変に黒幕あり?関ヶ原は家康の陰謀?義経は陰謀の犠牲者?足利尊氏=陰謀家説は疑わしい?後醍醐天皇は黒幕ではなく被害者だった!?富子はスケープゴートにされた、騙されやすかった信長、「三成が家康の伏見屋敷に逃げ込んだ」は俗説、「小山評定」は架空の会議などなど史実とフィクションは明瞭に違う!ということを説明している。

 

太平洋戦争のルーズベルトの陰謀など後からくっつけた屁理屈があたかも本当のようにまかり通っていることがあるが、事実はそう理屈通りいくものではない。或る黒幕が何かをして歴史を動かすということは映画、物語の世界では実現できても、人はそう理論的に行動するわけではない。理詰めで完璧な行動なんて出来ていない。そのときの気分で動いてしまう。それを後から理屈を付けているだけ。信長にしても天下統一なんて頭にあったか?その日その日の敵にどう当たるか?ばかり考えていたのでは、晩年の秀吉だって、秀頼の事ばかり、でも思い通りにはならなかった。こんな当たり前のことを当たり前に書いてある本です。小説、物語としては面白いことと事実、史実は違うということを気付かさせてくれる本です。

 

本書もくじより
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
まえがき
第一章 貴族の陰謀に武力が加わり中世が生まれた
第一節 保元の乱
崇徳と頼長に謀反の意思はなかったetc
第二節 平治の乱
平清盛の熊野参詣に裏はない/後白河黒幕説は成り立たないetc.
第二章 陰謀を軸に『平家物語』を読みなおす
第一節 平氏一門と反平氏勢力の抗争
清盛が陰謀をでっちあげた/以仁王の失敗は必然だったetc
第二節 源義経は陰謀の犠牲者か
後白河は頼朝の怒りを予想していなかった/源義経の権力は砂上の楼閣だったetc
第三章 鎌倉幕府の歴史は陰謀の連続だった
第一節 源氏将軍家断絶
源頼家暴君説は疑問/策士・時政が策に溺れた「牧氏事件」etc
第二節 北条得宗家と陰謀
時頼黒幕説は穿ちすぎ/霜月騒動は正規戦だったetc
第四章 足利尊氏は陰謀家か
第一節 打倒鎌倉幕府の陰謀
後醍醐の倒幕計画は二回ではなく一回/尊氏は後醍醐の下で満足していたetc
第二節 観応の擾乱
尊氏がつくった北朝は尊氏の手で葬られた/足利尊氏=陰謀家説は疑わしいetc
第五章 日野富子は悪女か
第一節 応仁の乱と日野富子
日野富子は足利義視に接近していた/足利義政は後継者問題を解決していたetc
第二節 『応仁記』が生んだ富子悪女説
史実は『応仁記』と正反対/富子悪女説が浸透した三つの理由etc
第六章 本能寺の変に黒幕はいたか
第一節 単独犯行説の紹介
ドラマで好まれる光秀勤王家説と光秀幕臣説etc
第二節 黒幕説の紹介
一九九〇年代に登場した朝廷黒幕説/「足利義昭黒幕説」は衝撃を与えた/荒唐無稽すぎるイエズス会黒幕説etc
第三節 黒幕説は陰謀論
黒幕説の特徴/近年主流化しつつある四国政策転換説/空論etc
第七章 徳川家康は石田三成を嵌めたのか
第一節 秀次事件
豊臣秀次は冤罪だった/新説「秀吉は秀次の命を奪う気はなかった」etc
第二節 七将襲撃事件
「三成が家康の伏見屋敷に逃げ込んだ」は俗説etc
第三節 関ヶ原への道
「内府ちがいの条々」で家康は窮地に陥った/「小山評定」は架空の会議/転換点は岐阜城攻略戦etc
終章 陰謀論はなぜ人気があるのか?
第一節 陰謀論の特徴
因果関係の単純すぎる説明/論理の飛躍/結果から逆行して原因を引き出す/挙証責任の転嫁
第二節 人はなぜ陰謀論を信じるのか
インテリ、高学歴者ほど騙されやすい/疑似科学との類似性/専門家の問題点etc
あとがき
主要参考文献

NEW ELITE ニューエリート

  • 2018.06.24 Sunday
  • 16:37

書名:NEW ELITE ニューエリート
グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち
著者:ピュートル・フェリクス・グジバチ
発行所:大和書房
発行年月日:2018/3/1
ページ:295頁
定価:1.500円+税

 

著者ピョートル・フェリクス・グジバチはポーランドで生まれ、ドイツ、オランダ、アメリカで暮らしたあと、2000年に来日したという人。モルガン・スタンレーなどを経て入社したグーグルではアジアパシフィックでのピープルディベロップメントを担当したのち、グローバルでのラーニング・ストラテジーに携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。日本在住17年となる現在は、独立して2社を経営しているそうです。

「私たちはどのように働き、生きるのか」という視点で今までの外見や学歴で仕事を判断して行く時代ではなく、新しい時代に入っているということを啓蒙している。

 

そして、そのように実績を積み上げてきたいま、実感していることがあるのだといいます。外見や学歴などで仕事を判断していた時代が終わり、「私たちはどのように働き、生きるのか」という大きな視点で見ても変化が必要な時代に入っているということ。
従来型のオールドエリートは固定化された「地位」のようなものでした。有名大学を卒業したら、学歴エリートとして「○○大学卒」という肩書きのもとに生き続ける。一部上場の大手企業に就職すれば、エリート社員としてい続けられる、という具合に。でもこんなエリートは成長の余地がなくなってきていることは昨今の不祥事を見ていても明らかになっている。エリートとは恥ずかしい人たちが未だに跋扈していることでも判る。

 

「楽しんで仕事した者勝ち」の世界がやってくる。早く結果を出して自分をアップデートしていく&社会に影響を与えることの大切さを、これからの社会予測とともに伝える。既存の価値観から新たな価値観への転換、そして楽しんで仕事した者勝ち」、楽しむことに重点をおいた働き方、マラソン型の人生ではなく、スプリンター型の人生。コツコツと継続するのではなく、遣るときはやる休むときは休む。一生をコツコツとマラソンを走っているような人生を送る時代ではないと言っている。これは既存の価値観からすると凄く違うので、反発も多い考え方かもしれない。でも時代は段々変わってきているのでしょうね。今静かなブームになっている本とか?若い人は直ぐ理解できるかも知れないけれど、ちょっと取っつきが悪い本です。

 

 

 

明治維新の正体

  • 2018.06.23 Saturday
  • 22:46

書名:明治維新の正体
徳川慶喜の魁、西郷隆盛のテロ
著者:鈴木 荘一
発行所:毎日ワンズ
発行年月日:2017/4
ページ:318頁
定価:1,500+税

 

明治維新については勝者の理論で薩長を賛美した言論が多く、それを信じている人が多い。しかし勝者が作った歴史だけを見ていて本当のことが見えてくるのか?明治150年の今年、少し考えてみることも必要ではないか。水戸藩の尊皇攘夷を横からかすめ取った長州、何故か水戸藩35万石、長州藩35万石、彦根藩35万石、御三家、外様大名、親藩それぞれが幕末、それぞれの立場で動いた。徳川慶喜の大政奉還で、徳川から島津家、もしくは毛利家に政権が転がり込むと考えていたものが殆ど、でも何故か島津家、毛利家は蚊帳の外、そこには大久保利通と西郷隆盛が主君をそっちのけでしゃしゃり出てきた。長州でも桂小五郎、伊藤博文が出てきた。じっくり考えてみるとこの行動原理は何だったのか?幕府と各藩の合議性で運営していこうとしていたとき、西郷の強力な主張で幕府を滅ぼすという選択によって、明治維新と言われる政変が起こった。

 

この本は明治の新政府によって行われたとされている事についても幕府の要人が外国との外交、日本の行く末を考えた産業振興策などを掘り起こしながら、江戸時代は封建制で遅れた、徳川幕府は駄目な政府という宣伝の嘘を暴いている。なんと言っても江戸時代というのは260年間にわたって戦争もない平和な時代が続いたのだという事実。そして明治以降戦争、戦争の歴史150年間で半分は日本には関係ないが世界は戦争の時代を150年続けている。明治維新の正体を暴いている。幕末史も司馬遼太郎の偏った司馬史観だけで見つめてはいけないことが判る本だと思う。司馬遼太郎の歴史は歴史ではなく物語、語り部だということを忘れてはいけない。面白おかしく興味を持てるように物語を作っている。


本書目次より      
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
第1章 維新の先駆者徳川慶喜;
第2章 日米和親条約を容認した徳川斉昭;
第3章 通商条約の違勅調印;
第4章 吹き荒れる攘夷の嵐;
第5章 慶喜が条約勅許を得る;
第6章 イギリスが薩長を支援;
第7章 徳川慶喜の登場;
第8章 大政奉還の思想;
終章 万民平等の実現

 

戊辰物語

  • 2018.06.23 Saturday
  • 22:17

書名:戊辰物語

著者:東京日日新聞社会部 編
発行所:東京日日新聞社会部
発行年月日:昭和3年(1928年)5月25日
ページ:357頁
定価:二圓

 

歴史については事件が起こって直ぐという時には結構ピントの外れたが見方をしていることが多い。陰謀説など興るはずのないことを頭だけで考えた輩が論理的に考え、それを流布する。しかし現実はそんなものではない。或る個人、団体の一部が或る企みをもってやっても思い通りいかないもの。明治維新なんかも長州・薩摩が仕掛け、旧幕府が負けて、江戸の人たちは大歓迎をもって、官軍を迎えたかに宣伝されているが、この戊辰物語を読むと江戸の庶民からは随分薩長の官軍は毛嫌いされていたことがわかる。明治維新60年の昭和3年に、明治維新の動乱を経験した古老の回顧談(高村光雲翁、尾佐竹猛翁、山岡松子翁、柳屋小さん翁、金子堅太郎翁など)を集めて、当時の庶民感情、時代の気分など敗者から見た維新の記録として綴られている。明治維新150年の今年、一回読んでおくと良い本です。

 

坂本龍馬の剣術の指南は千葉周作ということで、広まっているが、実はこの本によると「小千葉」千葉周作の弟定吉その息子の重太郎に剣術を習っていた。幕末の剣術家というと千葉周作、桃井、斎藤の3家が有名ですが、明治維新のころは千葉周作も桃井も、斎藤も高齢か、なくなっている。したがって坂本龍馬が師事したのが、千葉定吉だったのだろう。勿論、北愼一刀流です。これは新聞の読み物だから結構興味本位に書かれている。したがって真面目くさった歴史家の言ではなく。世間の噂や庶民の生の貴重な証言などを引き出している。理屈で押した本ではなく、まず読み物としての面白さ、そして歴史書、歴史家(明治政府の御用学者)が無視してきた事実などが取り上げられている。

目次から「枯れ行く葵にお江戸の不安」「ハイカラ好みの将軍様へ反感」「朱鞘に足駄いきな彰義隊」などタイトルだけでも興味を持ってしまう項目が並んでいる。1985年に岩波文庫からこの本を再編集したものが出ている。国立国会図書館デジタルコレクションで昭和3年の原文を読むことができる。150年前の明治維新ですら知らない事が一杯出てくる。こんな視点からの歴史も面白い。

 

国立国会図書館デジタルコレクション - 戊辰物語
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1178345/39

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